こんにちは。ここでは、人物の練習をやるために本を読むことは有効か?についてお話をします。
イラストやデッサンを初めて描くときって、本を読んでからとりかかったほうがいいかな?と疑問に思いますよね。
私は本よりもまず、自分の手や自画像のクロッキーから始めるのが良いと思います。
この記事では、なぜ知識をつける前に自分の身近なものを描くことを始めるのが良いのかについてお話をしていきます。
この記事を読んで、あなたも人物を描くことに挑戦してもらえたら嬉しいです。
1.人物を描く前から本を見ても、本の内容がわからない

人体の構造はものすごく複雑
人のからだは骨の数が約206個、関節も約260個あるといわれており、骨格以外にも筋肉・表情(内面)・体型などいろんな要素がつまっているとても難しいモチーフです。描く前から美術解剖図などを本で見ても、その知識が活かせるレベルにまで達していないので、読む時間自体がとてももったいないです。
クロッキーで全身が描けるようになってから、本を見てかたちの違和感をつぶしていくほうが効率よく上達できます。
事例:体験談
私も人物デッサンをはじめたときに、やっぱり知識は必要かも?と思ってダヴィンチの解剖図集を見たんですが、全く理解できませんでした。(これは本の選択もちょっとずれてたなと反省してます)
大人になったころにはイラストの描き方というのも読んだり調べてみたもののやっぱり「アタリ」や「丸で描く」の意味が全くわからなくってとても悩みましたが、短時間クロッキーを重ねてようやくイラスト系の人物の描き方の知識や概念がわかるようになりました。
2.知識を先につけることのデメリット

人物画としての面白みがなくなる
先に本で構造の知識をつけてしまうと、人物画はかなりカタイ印象になります。
人のからだの柔らかさやにじみ出る人柄、イラストであればキャラクター性だとかそういった内面が出ているものが人物画の魅力だと私は思っています。
そういう内面があらわせるのは、技術や知識ではないんです。
漫画でも、絵はあんまり上手くないけどすごくキャラクターやストーリーに引き込まれる作品ってありますよね。良さというのは上手い下手ではかるものではないことがわかるかと思います。
知識の左脳、知覚の右脳
絵の教本として有名なベティ・エドワーズの『脳の右側で描け』では、知識をつける(左脳を働かせる)よりもタイトルそのままの 右脳を使うことをとても大切にしています。
左脳タイプの能力が身につけば、それに越したことはありません。それに加えて右脳タイプの知覚能力を教えれば、生徒は「対象を文脈のなかで見る」「全体像を見る」「遠近法によって対象の正しいポロポーションを見る」ことができ、事物を観察して把握できるようになります。要するに、ものごとを直感的に理解し、左脳という断片化した世界に意味をもたらすことができるのです。
ベティ・エドワーズ著『決定版 脳の右側で描け』第4版より
ベティ・エドワーズが伝えているのは、デッサン初心者に、デッサンを通して右脳を使うことで知覚を鍛え思考を深められるようにするといった内容です。
私も基本的にはこの考え方をベースにしています。
3.身近な実在のモデルは自分

紙とペンがあればすぐできる
本を読む前にとりあえず描いてみよう、となったときに、やっぱり一番身近なモデルは自分自身です。そして、自分の手足を描くのであれば紙とペンだけ、自画像であれば紙とペンにプラスして鏡を用意するだけですぐに始めることができます。
家ですぐ人物練習を始めるには『ひきこもり上等。家でできるクロッキー練習法』の記事もおすすめです
描いたものと実物の比較がしやすい
自分の描いたものと同じポーズの写真を撮って見比べると、より客観的にズレをみることができます。
なのではじめは本を見なくても自分と向き合ってやってみるだけでもじゅうぶんな練習になります。
自分の絵と自分の顔や写真を見比べる。この間違い探しを繰り返して感性を磨いて基礎力をつけ、もっと絵に説得力がほしいと感じた時に教本を見てみると、表現力が増します。
自画像を多く描いた画家の例
自画像を多く描く画家もいます。彼らのクロッキーや人物描写、線の表現はイラスト・絵画両方の分野でとても参考になっています。

シーレは映画にもなりましたね。大量の自画像と、身近な人物を主に描いています。
★ホルスト・ヤンセン
シーレもヤンセンも淡い色彩と鉛筆でエロスを描いておりそのバランスがたまらなく良いです
『初めての人物練習で知識は後付けにしたほうがよい理由』のまとめ
人物練習で、知識は後で良い理由についてお話ししました。
- 初心者が人体構造みても実践的にわからない
- 左脳先行型で頭でっかちになる可能性ある
- 自分を描いて比べるほうが訓練としてははるかに観察力が鍛えられる
「やってわかる」ことはなによりも大きな自分の知的財産になります。
まずは身近なものからトライ&エラーをくりかえしてみましょう。